ツーツー

会期|2020年11月28日(土)- 12月22日(火)
時間|10:00-18:00 入場無料 水曜定休
会場|金沢アートグミ
主催|認定NPO法人金沢アートグミ
協力|金沢アートグミにご寄付頂いた皆さま、キタイッサカ、あをば荘
記録写真|松尾宇人

1. 指の腹
(2020年/HDビデオ/1分34秒)

人と人との接触を版画のように捉えた作品。アクリル板越しに2人の身体を(非)接触することで、接触面の皮膚がプリントされたように貼り付いていく。肉片のような本作のイメージは、今から100年前に「スペイン風邪」が流行した時期に生まれたダダやシュルレアリズムでも見られる、断片的な手や肉片のイメージとも重なるかもしれない。(佐藤)

飛沫や指紋といった、人が「そこにいた」痕跡は拭き取ることが推奨されている昨今ではあるが、本作では指の腹のイメージを、コピー&ペーストするようにアクリル板=スクリーン貼り付けている。指先から剥がれた映像が示すのは、一方から一方への接触の失敗であるとともに、身体の痕跡がデジタルなイメージのように扱われる様子である。(原口)

2 シェヘラザードのビデオ・レター
(2018年〜/3チャンネルビデオインスタレーション/ HD ビデオ/ 52分56秒)

寝る前にスマートフォンを見ることが習慣化している。そのスマートフォンに、眠る前に物語を吹き込み、相手に送信して複数の物語をつくっていく作品。物語は、その日の私的な出来事やニュースが自ずと反映されている。谷川俊太郎+寺山修司『ビデオ・レター』を下敷きに、『千夜一夜物語』のストーリーテラー、シェヘラザードのことを考えた。(佐藤)

「お伽噺」とは、退屈な時に話し相手になることを意味する「伽」を含む言葉であり、時代を超えて、不特定多数の作者によって紡がれた物語だ。本作では、ビデオ・メッセージとして物語を送り合い、2人で1つの物語を作り続けている。その日あった出来事を元にした話が、スマートフォンやメッセージ・アプリを通して、自分の手を離れた「お伽噺」となってゆく。(原口)

3. Stamps
(2020年/ハガキ、HDビデオ)

メッセージ・アプリの「スタンプ」と切手を意味する「スタンプ」。本作では切手だけ貼り付けた手紙をお互いに郵送しあっている。相手が送った切手の図柄からメッセージを想像・解釈して、それに対して自分のメッセージを伝える、というやりとりを繰り返した。2人の手元には、ちぐはぐな会話のキャッチボールと、絵文字として使用したスタンプが残された。(佐藤)

切手の図柄を絵文字に見立て、文章を作って葉書に貼って送りあう。自分のメッセージはどれほど相手に伝わり、また相手の意図を自分はどれほど理解しているのか。少し前まで、人は葉書に言葉を綴り、今よりも気軽に文通していた。さながら、送受信に時間がかかるメールやメッセージ・アプリのように。(原口)

4 .顔の線
(2020年/HDビデオ/8分40秒)

飛沫感染防止のために、至るところで目にするアクリル板。本作では、人と人とを隔てる飛沫感染防止板の用途を転用して、それぞれのプロフィールをなぞるための支持体として使用した。アクリル板越しに座る佐藤/原口は反射する自分の顔をなぞり、手前にいる原口/佐藤は相手の顔をなぞる。2つの右手が不器用に描くポートレート。(佐藤)

人と人との接触やおしゃべりの飛沫を防止するアクリル板やビニールシート。透明な仕切り越しに会話をするニューノーマルにおいて、私たちはどれほど互いの顔を見ているのだろう。相手と自分の顔をアイコンとして捉えるのではなく、その時間、その空間にいることを確認し合うためのおしゃべりのような手遊び。(原口)

5 .ツーツー
(2020年/電話番号)

1991年開催の「電話網の中の見えないミュージアム」という企画の図録には、〈NTTの電話網全体を美術館と見たて、自分の部屋の電話やFAXでそこにアクセスするだけで、世界の最先端のクリエイターたちの作品に触れることができる〉と書かれている。2020年はオンラインイベントが急増した。本作では電話の話中音(Busy Tone)をモチーフにしている。(佐藤)

ステージにある電話番号に電話をかけてもらう参加型作品。「ツー」という音を佐藤・原口が交互に発音することにより、互いの声色を真似し合い、会話のようなやりとりとなる。通話ができない状態を示す話中音を模した2人の音声と、一対一のコミュニケーションツールである電話を接続した作品。(原口)

ハンドアウト(ポスター/記録集)のDLはこちらから

編集・執筆|佐藤史治+原口寛子
アートディレクション|倉有希(daichusho design)
デザイン補佐|佐藤史治+原口寛子
発行|認定NPO法人金沢アートグミ