i’m goin’ home.

プロジェクト期間 2020.7-2021.3 | 展覧会 2021.3.11-3.21 | 元・うつみ菓子舗 八日町店、宮城県気仙沼市

宮城県気仙沼市の防災無線から毎日夕方18時に流れる音楽《家路》。2020年7月から2021年3月にかけて気仙沼市・八日町に通いながら散策と取材を行い、公開制作で新しい《家路》の歌詞を創作した。完成した歌詞は防災無線でアナウンスを担当する市の職員の方に朗読いただき、会期中、商店街のスピーカーから毎日18時の《家路》放送後に音声を放送した。
《家路》はアントニン・ドヴォルザークの交響曲第9番作品95「新世界より」の第2楽章ラルゴの旋律が元となっている楽曲である。もともとアメリカとカナダの先住民オジブワ族の霊歌から着想をえた本曲は、ウィリアム・アームズ・フィッシャーが1922年に作詞・編曲して現在の《家路》として広まり、日本でも宮沢賢治をはじめ複数の歌詞や訳詞が存在している。また本来の歌には、地上だけでなく天上の居場所のことが込められている(*)。
コロナ禍でステイホームが推奨される昨今、震災から10年目を迎えようとするこの場所で、その旋律に耳を傾け、私たちのホームとそこへ還る道を辿る作品となった。

*西村 理「《Goin’ Home》から《家路》へ」『大阪音楽大学研究紀要 (52) 2014年3月』参照

1.気仙沼・八日町版《家路》
(HDビデオ、トランペットスピーカー/30分5秒をループ再生)
気仙沼版《家路》の歌詞を朗読する音声と字幕のような縦長の映像が、10分に1度再生される。夕暮れ時から日没に至るまでの空を気仙沼市にて撮影し、文字の背景として使用した。音声は防災無線を思わせる形状であるトランペットスピーカーから再生した。

2. 気仙沼市の防災無線(HDビデオ/9分をループ再生)
壁紙を貼り付けた板を家形にくり抜き、気仙沼市内の防災無線を撮影した映像を投影した。

3. 《Goin’ Home》の歌詞(展示会場ガラス面にカッティングシート)
《Goin’ Home》の歌詞(ウィリアム・フィッシャー作詞)をカッティングシートに出力し、展示会場を囲むようにガラス面に貼り付けた。水平線を表現するために一行で出力し、一定の高さで貼り付けている。

その他に、プロジェクトの過程で気仙沼・八日町周辺に住んでいる方に書いていただいた「家路」エピソードを写真用アルバムに綴じたものと、2020年7月から2021年3月にかけて滞在時に毎回作成していた「家路日誌」を制作。来場者が自由に手に取れるようカウンターに常設した。